BOOK LIFE

天才読書: 山崎良兵

※本サイトはPR表記を含みます。

天才読書」読みました。いきつけの実店舗の本屋があるのですが、本に立ち読みできないようにビニールでカバーされていて、内容を見ることができず、余計欲しくなって即ポチりました。

現代の天才と称される超巨大企業を築きあげた、イーロン・マスク、ジェフ・ベゾス、ビル・ゲイツの3人が一体どのような本と触れ合い、自身を形成してきたのか、そのバックボーンの一部に触れることができる良書でした。

まず、最初にイーロン・マスクからどんな本を読んでいたのかの紹介から始まります。イーロンは幼少期に「いじめ」にあっていて、本がお友達というぐらい、読書に没頭していたようです。10代からアダム・スミスの国富論を読んでいたり、歴史に触れ、SFなどの紹介もたくさんありました。

率直にこの本を読んでいて面白いなーと感じた所は、著者が実際に三人の読んだオススメの本をご自身で熟読され、それを要約して紹介してくれるのですが、それがまたわかりやすい。本を読んだ気にさせてくれるレベルです。そして、三人ともに実際に取材してインタビューをしているのも興味深かったです。

イーロン・マスクとジェフ・ベソスは結構、興味が似ている所があって、実際にスペースXとブルーオリジンという宇宙事業を展開している所も同じ。共にSFも好き。でも、どちらかというとジェフ・ベソスの方がビジネス書が多い印象がありました。(単に天才読書のピックアップがそちらに偏っただけかもしれませんが)

しかし、ビル・ゲイツの方は歴史はもちろん、現代の世界全体の問題に触れている本が多く、また、ゲイツの世界問題(貧困・飢餓・疫病・環境問題など)を解決するための活動はとても感銘を受けます。一番自分が興味を持って、紹介されている本を読みたいなと感じたのはビル・ゲイツでした。

やはり、自身を成長させる過程で重要とされる項目に「読書」は欠かせないものなのだな。とこの本にも書かれています。もちろん、誰でもが読書をして天才のようになれるわけでもないのはわかっております汗。

人の目に触れることもなく、目指している何かの陽の目を見ることがなくても、たくさんの読書を積み重ねていく過程が間違いなく自己を養うことになるだろうし、何かに活かせる時がくるのだろうという確信を持って、学び続けることが大切だと感じました。

 

以下、ハイライトです。

謎を解くカギは愛読書にあった

(イーロン・マスク)
人類の数千年にわたる歴史を考えると、文明が発展した時期がある一方で後退する時期もあった。再び同じことが起きないとは限らない。だからこそ来るべき危機に備えて、地球以外に人類が住める場所を確保する必要がある

欧米エリート層の根底にあるリベラルアーツ教育

そもそも教養という言葉は何を意味するのでしょうか?英語では「liberalarts(リベラルアーツ)」と呼ばれ、その語源はラテン語の「artes liberale(アルテス・リベラレス)です。アルテスは技術を、リベラレスは自由を意味しており、ローマ帝国時代は、自由市民と奴隷に階層が分かれていたことに由来します。アルテス・リベラレスは、主人に支配される奴隷ではない「自由市民が身につけるべき技術」という意味になるでしょう。

「ペイパルマフィア」のドンが語る起業論

「人間の行動は模倣に基づいており、模倣は無意味な競争や対立を引き起こす」というジラールの模倣理論に魅了されたティールは、この理論を個人的な生き方や競争を避けて独占的な地位の獲得を目指すビジネス戦略にも応用するようになりました。

スタートアップを成功に導く条件

「すべての歴史は繁栄と衰退の繰り返しだと古代人は考えていた」「その不運を永遠に避けられるかもしれないと人間が希望を抱くようになったのはほんの最近のことだ」「競争圧力を和らげる新たなテクノロジーがなければ、停滞から衝突に発展する可能性が高い。グローバル規模での衝突が起きれば、世界は破滅に向かう」

ローマはなぜ滅びたのか?

ローマ帝国の衰亡にキリスト教が与えた影響です。「キリスト教の国教化が、宗教対立に火をつけ、皇帝は、軍隊よりも、キリスト教の宗派の正統性などを議論する公会議に関心を持つようになった」と指摘します。

人類が歩んできた歴史とは何か、それを動かしてきたリーダーは何物だったのか、彼らが大事にしていた哲学や思想はどのようなものだったのか・・。マスクに限らず、傑出したリーダーたちは、歴史に学ぶことに貪欲です。

ロシアを恐怖で支配した独裁者の生涯

モンテフィオーリの著作を読むと、ソ連においては、不当な逮捕や処刑、毒殺、自作自演は当たり前のように起きており、なんら驚くべきことではありません。そもそもロシアの歴史においては、民主主義と自由が事実上存在しない時代がほとんどであったことを、日本を含む西側の人間はもっと理解すべきでしょう。

グーグルもアップルもSF作家をコンサルタントに

テクノロジー分野で画期的なイノベーションを生み出そうと思うならば、SFから学ぶことは力になります。米国のIT産業をリードするグーグルやアップル、マイクロソフトも、SF作家をコンサルタントとして雇っているそうです。

AIが人間を超える「シンギュラリティ」

(イーロン・マスク)
「私は悲観主義者ではなく、未来に関して楽観的だ。終末論が好きなわけでもない。しかし歴史は、技術が波のように進歩したり、後退したりすることを示唆している。歴史上の多くの文明はそのような経験を繰り返してきた。そうならないことを願うが、技術の後退が起きる前に火星に基地を作ることは重要だと思う」

格差社会で再び脚光浴びるマルクス

ロシア革命で誕生したソ連が1991年に崩壊したことから、共産主義は失敗だったという見方が一時は世界に広がります。一党独裁で、個人の自由を抑圧する社会だったこともあり、否定的な見方が強まりました。しかしマルクスの思想を検証すると、ソ連のような全体主義的な世界を目指していたわけではありません。だからこそ原点に返ってマルクスと資本論、未発表の草稿などを改めて見つめ直すことで、資本主義が抱える格差などの問題を解決するためのヒントを得ようとするうねりが起きているのでしょう。

「新しい資本主義」とは何か?

マスクは自分自身が「社会主義者」だと発言したこともあります。「私は実は社会主義者だ。資源を最も生産性の高いものから最も生産性の低いものに移し、実際に害を及ぼしながら、善を行うふりをするようなものではない。真の社会主義は、すべての人にとっての「最高の善」を追求するものだ」

ベゾスがアマゾンで実践した「教科書経営」

アマゾンの競争力の源泉はベゾスの哲学にあるということです。その象徴がアマゾンが掲げる世界共通の「Our Leadership Principles(リーダーの原則)」という14項目からなる信条です。
「顧客中心主義の観点から、顧客を起点にすべてを考えて行動する」
「リーダーは長期的な価値を重視し、自分ごととしてマネジメントに取り組む」
「イノベーション(革新)とインベンション(発明)を追求し、シンプルな方法で実践する」
「常に学び、自分自身を向上させ続ける」
「大きな視野で思考する」
「倹約の精神を大事にする」
「同意できない場合は、敬意を持って異議を唱える」
といったものです。

ベゾスはビジョナリー・カンパニーの理論を実践

こうした多産多死を覚悟しつつ、イノベーションにチャレンジし、そこから一握りの大きな成功を生み出すという姿勢をアマゾンは徹底しています。「アマゾンは世界一の失敗をする企業である」ベゾスは述べています。

起業の常識を否定するユニークな一冊

スタートアップの文化ともいえるワーカホリック(仕事依存症)も否定します。「仕事依存症は不必要なだけでなく、バカげている」「働きすぎは、解決するものより多くの問題を生み出すことになる」「彼らは危機する生み出す。彼らは好きで働きすぎているので、効率的な方法を探さない。ヒーロー感覚を楽しんでいるのだ」。ワーカーホリックを自認する人には耳の痛い言葉です。

すごい製品やサービスを生み出す最も単純な方法は、あなたが使いたいものを作ることだ。自分の知っているものをデザインするなら、作っているものがいいかどうかすぐに判断がつく

「黒い白鳥」のような異常な出来事は予測不可能

人間は今ある世界が未来も続いていくような錯覚によく陥ります。たかだか10年や20年しか続いていない現象が、将来も同じままであるかのように思い込んでしまいがちなのです。

ベゾスが最後の「株主への手紙」で引用した言葉

なぜベゾスはドーキンスの言葉にここまで魅了されたのでしょうか?自然に任せると、世界はあなたを「ノーマル(普通)」な存在にしてしまう。だから自分たちの際立った特徴を維持するためには懸命な努力が必要であり、自分たちを周囲とは違う特別な存在にしてくれる強みを決して失ってはいけない、というメッセージが込められています。

「独自性、独創性に価値があることは誰もが知っている。私たちはみんな「自分らしくあれ」と教えられている。私があなたに本当に求めているのは、その独自性を維持するためにどれだけのエネルギーが必要かを受け入れ、現実的になることだ。世界はあなたが普通であることを望んでいる。そうならないようにしてほしい」

「独自性を持つには代償を払わなければならないが、それだけの価値がある。「自分らしくあれ」のおとぎ話バージョンは、自分の個性を輝かせるとすぐにすべての痛みが止まるというものだ。それは誤解を招くものだ。自分らしくいることには価値があるが、簡単でタダで手に入るものだとは思わないでほしい。継続的にエネルギーを注ぐ必要がある」

ウォルマートにも当てはまる「カルト的な企業文化」

「ウォルマートのようなサクセス・ストーリーは、今の時代でも可能なのか?もちろん可能だ、というのが私の答えだ。今この瞬間にも、素晴らしい発想をもった誰か、何万人もの人々が、成功への道に向かって歩み始めている。何としてもそれを達成したいという情熱さえあれば、成功は何度でも起こり得る。必要なのは経営について絶えず学び、絶えず疑問を抱く姿勢とそれを実行する意欲だけである」
経営について絶えず学び、疑問を抱く姿勢を持ち続ける一方で、強烈な実行力も持ち合わせたベゾスは、ウォルマートをはるかに凌駕する株式時価総額を誇る巨大起業にアマゾンを育てました。

知識や経験の幅を広げることが成功への近道

ゲイツは自分自身をゼネラリストだと考えており、「私のコンピューターへの情熱は常にほかの多くの興味と混ざり合っていた。幅広いトピックに関する本を読むことに多くの時間を費やした」と述べています。

ノーベル賞学者の「絶望を希望に変える経済学」

今日貧しい国からくる人々は、立ちはだかる厳格な入国管理制度を乗り越えるために、まず渡航費用と頑強な体(または高度な資格)を持ち合わせていなければならない。このため移民の多くは、技能なり、野心なり、忍耐力なり、体力なり、何かしら並外れた能力を備えている」

「貧乏人の経済学」をゲイツが称賛する理由

ゲイツ財団における農業支援も、実効性が高い戦略を考えて実行しているそうです。「貧しい農家が自国および近隣諸国で農産物を販売することも支援している」、とゲイツは述べます。現地の人々が経済的に自立できるような援助のスタイルが、持続性のある支援だといえるからです。ただお金をばらまくのではなく、本当の問題はどこにあるのかを考えて、実際に役立つ支援をすることをゲイツは重視しています。

年収が数億から数十億円のスーパー経営者

所得に応じて課税する累進課税の制度が「金持ち優遇」になったことが、米国や英国を中心に格差拡大を助長したとピケティは指摘します。

ゲイツはピケティが提案する「所得ではなく資本に対する累進的な年次課税」には賛成していますが、「消費に対する累進課税がベストだ」と主張します。先ほどの3人の富豪のたとえ話のように、企業に投資する人や慈善活動に力を入れる人よりも、贅沢な生活を送る人の方が多くの税金を払うべきだと考えているからです。

エネルギーの未来とテクノロジー

エネルギー権益の「草刈り場」になった中央アジアですが、ここで重要なのはロシアがその状況を苦々しく見ていたことです。ロシア帝国とソ連の後継者という意識が強いロシアは、かつての版図で多くの国が独立し、自分たちが保有していたはずの権益を奪われたと感じていました。
このような被害者意識が高まったことが、かつてロシア帝国の一部だった地域に軍事力も使って支配を広げる「レコンキスタ(国土回復運動)」的な動きにつながっています。2022年に起きたウクライナ侵攻もその延長線上にあるといえるでしょう。

「親ガチャ」を嘆くよりも努力したほうがいい?

マインドセットがしなやかになると、夫婦、親子、教師と生徒といった人間関係のあり方が変わってくる。評価する者と評価を下される者という関係から、学ぶ者と学びを助ける者という関係に変わってくるのである。

カトリック労働者運動の女性闘志、ドロシー・デイ

すべての人間は、ただ快楽のために生きるのではなく、大きな目的のために生きてゆくものである。そして正しさ、美徳を求めて生きてゆくものである」「有意義な人生とは、理想を掲げ、その理想に向かって最後まで戦い続けた人生である」「弱点を克服するために戦っていれば、日々のちょっとした行動、選択よりも慎重になり、絶えず深くものを考えることになる。そうするうちに、心は次第に良いものに育っていく」

なぜヨーロッパ人はアメリカ大陸を容易に制服できたのか

銃と鉄よりもはるかに恐ろしかったのが、病原菌です。スペイン人と共に、天然痘、インフルエンザ、チフス、ペストなどの伝染病がアメリカ大陸に初めて持ち込まれました。これらの感染症に対する免疫がなかったアメリカ大陸の先住民は、文字通りバタバタ倒れて命を失っていきます。
アタワルパの前のインカ帝国は2代続けて天然痘で命を落としています。インカより先にスペインのエルナン・コルテスに制服された中央アメリカのアステカ帝国も天然痘の大流行で多くの命を失いました。

狩猟採集型の伝統社会から学べること

現代的な社会へと発展していった時期は、人間全体の歴史から見れば、ほんの一瞬でしかありません。だからこそ「昨日までの世界」ともいえる伝統的な社会を見つめ直し、理解することが大事だとダイアモンドは考えています。

日本の近代化を成功させた「3つの原則」

欧米列強に侵略されかねない危機を日本はどう乗り越えたのでしょうか?ダイアモンドは明治政府が採用した3つの原則が優れていたと評価します。
第一の原則は「現実主義」です。指導層には征夷派だった人物もいましたが、すぐに現実主義が優勢になりました。「今の日本には西洋人を追い払う実力はない。西洋列強の強さの源である火器や政治・社会制度を広範に導入して先に国力を高める必要がある」という考え方です。
第二の原則は、「西洋諸国に強要された不平等条約を改正する」ことを最終目標にしたことです。そのためには、国力を養うだけでなく、西洋式の憲法や法律を備えた、正当な文明国だと欧米の列強に認めさせる必要がありました。。
第三の原則は、「外国の手本をそのまま導入するのではなく、日本の状況と価値観にもっとも適合性が高いものを手本としつつ、日本向けに調整する」というものです。

おわりに

「書物の新しいページを1ページ、1ページ読むごとに、私はより豊かに、より強く、より高くなっていく」19世紀に活躍したロシアの劇作家で小説家のアントン・チェーホフはこんな格言を残しています。

学ぶことをやめるまで、本当に年を取り始めることはない

たくさんの本を読むことは、学び続けることを意味します。「学ぶことをやめるまで、本当に年を取り始めることはない。すべての本は私に何か新しいことを教えてくれたり、物事の見方を替えたりするのに役立つ。読書は世界への好奇心を刺激し、それが私のキャリアや仕事を前進させる力になった」。ゲイツはこう述べています。

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