BOOK LIFE

1945 わたしの満州脱出記 稲毛幸子

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1945 わたしの満州脱出記」読みました。本書は戦争時代に満州への夢・希望を抱いて日本国からと満州へと移住し、その後、日本が敗戦国となってから、露兵と満州人からの迫害を受けながら、日本へ帰国するまでの過去が綴られた本です。

日本が敗戦してから、満州で地獄の日々を過ごす著者に本を読みながら、想像を絶するような思いでした。何より大切な娘二人をなくし、かつ、娘二人のおかげで命を救われます。生きて本書を執筆する運命にあったのか、こうして後世に伝えていく使命なのか、不思議なことが人生にはあるとつくづく感じます。

開戦を決定するのは政府だったのだから、敗戦を決定するのも政府。国民を守り抜くのも政府の在り方ではないのか?と、憤りしか感じません。意を決して満州にわたった国民の放置さに開いた口が塞がらない思いです。なんで、犠牲になるのは何の罪もない国民なんだろう?(まだ軍人のみだけならまだしも、必ず、民間人も同じ扱いをされ、敵国のいいようにされる)

戦争はしてはいけないものなのは今の時代、誰でもわかりきっていること。でも、昔に帝国主義国が多かったことや、自分たちの国を守るための政策を推し進めるしかないのも、理解はできる。今の日本という国が平和なのも、命を賭けて先人たちが守ってくれたからこそ。その感謝は絶対に忘れてはいけないもの。

たくさんの要素から、主権を脅かされそうになって、戦争に突入しなければいけなかったとしても、国益上のやり取りは別腹でやれないのかな、世界ではいまだ戦争をやめられない、あんな国やこんな国があるけども、それも国の政策の一部で命よりも国益、権力なんですよね。それが現実。

個人的に人間って「基本愚か者」だと思ってます。たくさんの失敗を繰り返さないためにも、やっぱり本書であったり、目を背けたくなる過去を含め、知ることは大切なことだと思います。

16: ソ連の宣戦布告

日本とソ連が五年間の不可侵条約を締結したのは昭和十六年四月のことですが、まだ残りの11か月の有効期限が残っているにもかかわらず、アメリカと密約したソ連は、この条約を一方的に破棄して、突然奇襲を掛けて侵入してきました。その上、何の労も要せずに、ただ同然で北方四島まで不法占拠してしまったのです。

108: 娘たちに命を救われる

「今日は、貴方をシベリアの強制労働に連れて行くつもりで来たが、私にも貴方と同じように可愛い二人の娘がいる。だから止めることにした」略
もし、このままシベリアに連行されていたなら、体の弱い夫は捕虜収容所で死んでいたと思います。もちろん私たち親子も満州で死に、日本に帰ることはなかったはずです。
夫も私も、娘たちのお陰で一度ならず二度も危ないところを助けてもらいました。娘たちが私たちにとって救いの神だったことは勿論ですが、それ以外にも何か目に見えない力に助けられているような、そんな不思議な思いがしてきます。

133: 母の言葉

「いくら、貴方が身の不幸や悩みを神様に訴え求めても、決して助けてはくれません。神様や仏様は、みな自分の心に存在しているのです。逆境に出会った時には、決して自分に甘えず、相手に求めず、弱音を吐かず、貧すれば鈍すにならず、通ずるように頭を働かせ、気力と才覚を発揮して、前に進んで行かなければ道は開けて来ないのです。世の中は、神のせいでもなく、自分の考えと心次第で幸と不幸に分かれるのです。挫けずに強く生きて下さい」

135: 阿片との葛藤

いくら疲れていても嫌な顔一つも見せず、愚痴一つ言わず、いつも家族のために頑張ってくれている夫が、生き神様のように思えてきました。
感謝とありがたさで頭が下がります。幸せや神の心は外から来るのではなく、自分の心で見い出して初めて得られるということを、改めて夫に気づかせてもらいました。

152: 新京の冬

道路で野垂れ死にしている人たちは、満州人から日本人に変わってしまいました。新京だけでも約十万人の日本人が死んだと聞きました。
街には、諸行無常の風が吹き、一層人の心を冷たくします。待っていた神風からも見放され、いくらあがいてもなるようにしかなりません。敗戦の痛手を人々は脅かされながら、生活をして行かなければならなかったのです。

196: 日本上陸

「国破れて、山河あり」
この青い空、そして青い海、緑の山々と川の流れ――戦争に敗れても、昔と変わらぬ美しい自然のままで、うらぶれた姿の私たちを暖かく迎えてくれたのです。
涙が止めどなく流れてきます。これも死なずに生きて帰って来たからこそ味わえる幸せであり、また、この日本の大地を自分の二本の足で再びしっかり踏みたいばかりに、あらゆる苦難を乗りこえてきた甲斐がありました。
つくづく、生きることの大切さをかみしめたのです。

199: おわりに

それ以来一度も戦争をしていない「平和な国」日本。その平和は、先の戦争で命を落とした先人の方々のおかげであり、そしてその遺志を引き継いだ人たちのおかげでもあります。
そしてこの国が再び戦争の惨禍に曝されることのないよう、切に願うばかりです。

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