「マインドセット」読みました。著者はキャロル・S・デュエック。スタンフォード大学心理学教授で、イエール大学で心理学博士号(Ph.D)を取得されているようです。心理学の30年以上のキャリアがあるプロフェッショナルな方。
本書の大きなキーワードとしては「硬直マインドセット」「しなやかマインドセット」の2つが存在します。マインドセット(心の在り方)とは何か、という本書においての定義から始まり、いかにしなやかマインドセットを自身の取り入れ、そして、よりよき人生においての成功をつかみ取っていくか、という目的が示されています。
第八章までで構成されているのですが、各章に「スポーツ・つきあい・ビジネス・教育」というカテゴリに分別し、有名な人物の実際のストーリーを振り返り、硬直マインドであったがために、最後は失墜してしまった、または、しなやかマインドセットだったからこそ成功を収めることができた例など、たくさんの話に触れることができます。
個人的に子育て真っ最中の自分としては、「教育」のカテゴリが印象深く、なんでも褒めることが必ずしも良いことではない、褒め方を間違えると、子どもが「賢い」というもの親に見せたいがために、逆に努力しなくなってしまう、いきすぎると見栄をはり、ウソをつき、親に褒められるための手段を選ばなくなってしまう恐れがある、という話に少し危機感を覚えました。
子どもに対し、自分のエゴ(こうなってほしい的な)ものは控えめにしているつもりですが、本書のいう「すごいね」とか「賢い」というのはよく言ってしまっているなーと思いながら読んでいました。したら、何を褒められばいいのでしょうか…?その答えは、「努力する過程を褒めると良い」とのことでした。何かを達成するために根気よく取り組む姿を褒めると子どもは根気強くなるようです。(育児って周りの世話だけでなく、心の教育もあるのでタイヘン…)
少し育児よりに話がなりました。
マインドセットの目的は「いかにしなやかマインドセットに気づき、それを日々実践していくか」が本題なので、今何かの悩みがある、絶賛壁にぶつかっている、というような方にマッチする本ではないかと思います。
ビジネスカテゴリのマインドセットの話も、とても参考になります。過去のキャリアの中で自分が陥っていたケースもあって「なぜ上手くいかなかったのか」が明確になり、今後に活かしたいなと思えたことも本書を読んでの収穫です。
また、WEBエンジニアの方にもオススメしたいです。なぜなら、硬直マインドセットだと、コードレビューで指摘を受けた際などに苦労するだろうな、と感じるからです。
コードレビューは指摘の仕方によっては、実装者に勘違いされることも多いと思います。それは基本的にチャット上や GitHub 上で文章だけで相手に伝える必要があるからです。
対面ではないことはどうしても相手からの表情や空気感の情報量がチャット上と比べると圧倒的に少なく、普段なら気に留めないことが、文章上だけだと受け入れがたいケースも増えるのかな。と感じています。
ただし、しなやかマインドセットの状態だと、指摘されること自体が自分のためだと受け入れることができると思いますし、何より、レビューしてくれる人に日々感謝することもできます。なぜなら、それは「自分が気づかないことを気づかせてくれる大切な人」だから。
なので、なにか人に指摘してもらうことが億劫な人が本書「マインドセット」を読めば、人間的にもひと皮むけるような、そんな気がします。(実践すればの話だけど)
以下、ハイライトです。
あなたのマインドセットはどちら?
「しなやかマインドセット」である。その根底にあるのは、人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができるという信念だ。持って生まれた才能、適正、興味、気質は1人ひとり異なるが、努力と経験を重ねることで、だれでもみな大きく伸びていけるという信念である。
新しいことを学べたら成功か、賢さを証明できたら成功か
著名な社会学者ベンジャミン・バーバーがこう述べている。「私は人間を弱者と強者、成功者と失敗者とには分けない。・・・学ぶ人と学ばない人とに分ける」
特別であることを証明したい
能力を固定したものと思っている人(硬直マインドセット)は、しくじってはならないという切迫感にいつも駆られている。そして成功すると、誇らしさが優越感にまで膨れ上がる。なぜなら、成功するのは、固定的な能力が人よりも優れている証拠だからである。
マインドセットにまつわる疑問に答えます
マインドセットがしなやかならば、必ずしも自信など必要としないことが、私の研究から明らかになった。
つまり、得意だとは思っていないことにでも、果敢に飛びこんでいってやり抜いてしまえるのだ。得意ではないからこそ、あえて挑戦しようとすることさえある。これはしなやかなマインドセットの素晴らしい特徴のひとつと言えるだろう。うまくできる自信がなくても、尻込みせずに、楽な気持ちでトライできるのだ。
マインドセットをしなやかにするには?
困難に打ち克って何かを学ぶたびに、脳に新たな回路が形成されていく様子を思い描こう。その習慣を続けていこう。
危険な褒め方――優秀というレッテルの落とし穴
子どもに「あなたは頭が良い」と言ってしまうと、その子は自分を賢く見せようとして愚かなふるまいに出るようになる。
マインドセットをしなやかにするには?
人が自分より優れた業績をあげたときのことを思い出そう。その人は自分よりも頭が良くて才能が豊かだから、そうしたことができたのだと思ったのでは?次からは、才能の差ではなく、やり方が優れていたから、研究熱心だったから、懸命に練習したから、つまずいても挫けなかったからできたのだと考えよう。あなたもやる気を出せば同じことができる。
キャラクター 品格・気骨・人となり
キャラクターとは、困難に見舞われても挫けずに頑張り通す力のことだ。
トップの座を維持する
コーチのジョン・ウッデンは言う。「能力があれば、頂点にたどり着くことはできる。けれども、しっかりした人格が備わっていないと、そこに留まり続けることはできない。・・・人はいったん成功すると、ろくな準備などしなくても、おのずと、「魅せるプレー」ができるかのように勘違いしがちだ。よほどしっかりした人格の持ち主でないと、トップの座についた後も、それまで通りかそれ以上に努力し続けるのは難しい。何度も何度も勝ち続けるスポーツ選手やチームは、「能力もさることながら、キャラクターが優れている」のだと思ってほしい」
集団浅慮 VS みんなが考える
しなやかグループのメンバーの方がはるかに率直に自分の意見を述べ、ためらうことなく反対意見を表明した。グループの全員に人の意見から学ぼうという姿勢が見られた。それに対して、硬直グループでは、自分と相手とではどちらが頭が良いかを気にしたり、アイデアを出しても叩かれるのではないかと恐れたりして、そのような率直で、実りある議論は生まれなかった。集団浅慮にも似た状態に陥っていた。
「変わる」とは、どういうことか?
「変わる」といっても、外科手術を受けたように変わるわけではない。たしかに変化は起きていても、摩耗した膝や腰の関節を新しいものと取り替えるように、古い信念がすぐに一層されるわけではない。古い信念がまだ残っているところに、新しい信念が芽生え、それがだんだんと強くなるにつれて、今までとは違った考え方や感じ方、ふるまい方ができるようになるのである。
マインドセットをしなやかにするワークショップ
人間の脳はまだ神秘に包まれており、知能や脳の働きについてはわかっていないことがたくさんあります。知能と言うと、人間には頭の良い人、普通の人、悪い人がいて、一生そのままだと思っている人が大勢いますが、最近の研究ではそうではないことがわかってきました、脳は、筋肉と同じく、使えば使うほど性能がアップするのです。新しいことを学ぶと脳が成長して、頭が良くなっていくことが科学的に証明されています。
「あなたは自分の脳の世話係なのよ。正しい使い方をすれば、脳の成長を助けてやることができるわ」
「変わる」ことを恐れない
マインドセットを変えるにはまず、その自己を返上する必要がある。想像されるとおり、長年、本来の自己だと思っていたもの、自尊心のよりどころとなっていたものを捨て去るのは容易なことではない。特にたいへんなのは、マインドセットを切り替えることによって、それまでずっと恐れてきたもの――チャレンジ、苦闘、批判、挫折――をすべて受け入れざるをえなくなることだ。